今、ノンフィクションが熱い

以下の本は、5点満点で全て4.5点以上はあげちゃいたい良書。


アフリカ 苦悩する大陸

アフリカ 苦悩する大陸

エコノミスト」の記者が経済的側面から論じるアフリカの今。アフリカの貧しさの一番の理由は、強欲で国民から搾取することばかりを考えている、あるいは無能で有効な政策を実施することができない政府のせいである。必要なのは、まともな政府と法整備。それさえあれば後は市場の原理がまあなんとかしてくれるだろう、というのが著者の主張。

また、本書にもあるように政府が腐敗しがちなのは「部族主義」「縁故主義」あたりの社会的伝統も一つの原因であるとすると、そもそもそれらの小さな集団で成り立っていた社会を「国家」という大きな集団に組み直したヨーロッパ列強の罪というのはやっぱり大きいよなーと思う。同様のことは中東でも起こったのだけど、あちらはイスラムという共通の価値観と、オイルマネーという莫大な収入があったのでなんとかまともに運営できた、ということだろうか。


9・11生死を分けた102分  崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言

9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言

9.11の際にビル内にいた人々への徹底的なインタビューにより得られた個々の情報をまとめることで全体像を描き出したドキュメンタリー。事実は小説なりも奇なり、というか、ドラマティックなり、というよい例。

それと同時に、建築・消防・警察各当局の危機管理のまずさにより被害が拡大した面もかなり強調されていて、それらを補ったのが「ビル内にいた勇敢な民間人」であるという、知られざる英雄譚でもある。

翻訳の堅さと構成の複雑さが評判悪いみたいだけど、個人的にはそれも「ドキュメンタリー感」を強めていて良かったと思う。


カラシニコフ I (朝日文庫)

カラシニコフ I (朝日文庫)

カラシニコフ II (朝日文庫)

カラシニコフ II (朝日文庫)

その優れた設計により、誰でも使える・どこでも作れる、ということで世界を変えた(かもしれない)「カラシニコフ」を切り口として第三世界をみるルポルタージュ

設計した銃が世界各地での紛争・内戦で多くの人を殺している事実を問われ、「自分はただ国を守りたかっただけ」と答えるカラシニコフさんの言葉が印象的。


共産主義が見た夢 (クロノス選書)

共産主義が見た夢 (クロノス選書)

一時は世界を席巻しかけた思想のことを何も知らないのはいかがなものか、と思ってとりあえず読んでみた。ソ連という共産主義国家がどのように成立し、どのようにアメリカと渡り合う超大国になり、どのような矛盾によって崩壊したか、そのあたりが非常にわかりやすく書いてあった。一応この本の結論としては、共産主義は理論自体に矛盾を含んでいるため、その失敗は必然、ということになっている。


カストロ

カストロ

キューバに行く前に読む予定だったのだけど、結局今更読了。数限りない事実を積みあげることで、読者自身が自分なりのカストロ像を持つことを可能にしてくれているように思われる。とはいえ、ところどころ「それって主観じゃないの?」という内容があたかも客観的な事実であるかのように書いてあったりするので、若干注意が必要かもしれない。

自分としては、やっぱり歴史に残る偉大な指導者である、と思う。