重要なのは法令遵守や道徳ではなくてリスク評価

船場吉兆の廃業に関して。

 老舗は客との信頼で成り立っているが、船場吉兆は客を裏切り続けた。船場吉兆は、老舗の立て直しを創業者の娘である女将に託したが、新たに発覚した使い回しの問題が致命傷になった。使い回しは偽装発覚以前に起きた問題だったが、再出発時に外部の人間による厳しいチェックが必要だった。今回の問題は、老舗といえども企業の社会責任や法令順守を徹底しなければ生き残れないことを示した。

毎日.jpより


使い回しがニュースになったときにまず思ったのは、なぜそんなことをしたか。高級料亭という業態の利益の源泉を考えれば、露呈したらこうなる(廃業)可能性が高いことは分かり切っていたはず。

にも関わらずそのような判断に及んでしまった原因を、社長のパーソナリティ‐法令遵守の精神や道徳心、消費者に対する誠意の欠如に求めるのは簡単だけど、どうもそれだけでは説明不足なのではないかと思う。


法令遵守や道徳はもちろん重要なのだけど、それが最優先事項となるのは企業を取り巻く我々世間にとってであって、経営者当人にとっての最優先事項は、利益をあげて企業を拡大、あるいは少なくとも存続、させることであることは間違いない。

すなわち、仮に遵法精神ゼロの経営者であっても、今回のような会社がつぶれるリスクはそれが起きる可能性が無視できる程度に小さくなければ取りうるものではないはず。だとすれば、このようなリスクを取ってしまった理由は究極的にはただ一つ、リスクを正当に評価しなかったこと


リスク評価さえまともにしていれば、企業にとっても世間にとっても不幸であった、この一連の出来事は起きなかったに違いない。