ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌
ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)
- 作者: 芝健介
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/04/01
- メディア: 新書
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最近始めた、「漠然としたイメージだけでとらえている事柄について、教養として全体像をつかんでおこう」シリーズの一環として読んでみました。人種差別イクナイ(・A・)、ジェノサイドイクナイ(・A・)、ヒトラーイクナイ(・A・)とかそういう単純な図式でまとめられがちなホロコーストっていったい何だ?
- ユダヤ人蔑視はヒトラーの個人的な趣味というよりヨーロッパ全体に昔からあるもの。
- 最初は国外追放の予定だったけど、戦争で領土が広がったり縮んだりした結果として、追放が追いつかず殺すしかなくなった。
- その、国外追放から虐殺への方針転換の意志決定に関する詳細は意外と未だに不明。
- アウシュビッツは、最大規模ではあるものの、唯一の大規模収容所というわけではなくて、たまたま証拠隠滅が間に合わなかっただけ。ほかにも同じような規模の収容所がいくつもあった。
印象的なのは、殺された人数で言えば、ドイツのユダヤ人よりもポーランド、ソ連、チェコスロバキアといったドイツに占領された国々のユダヤ人の方が圧倒的に多いという事実。要するに、「強いドイツ」がなければここまで大規模な虐殺にはなりえなかったということ。
ホロコーストの発端が第一次大戦の敗戦によるドイツの鬱屈であり、その被害を拡大したのが敗戦の反動としての極端な軍国化であるとすれば、敗戦国をいじめすぎた戦勝国にもその責任の一端があるとも言えるところに、歴史の皮肉を感じる。