僕の音楽武者修行

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

最近はかなり体の具合が思わしくなくて心配な、世界に誇る日本の巨匠・小澤征爾が若干26才(!)のときに記した自伝。26才のくせに。指揮者なんて人種はそんなのばっかりですけど。


楽家を目指して、タダ(広告塔になるという条件で)でもらったスクーターと一緒に運賃無料の貨物船に乗って一人ヨーロッパへ。そして応募締め切りを過ぎつつ滑り込んだ最初の指揮者コンクールで優勝という、ドラマよりドラマチックなノンフィクション。

「どう見ても天才です、本当にありがとうございました」なのですが、同時に、しょっちゅう差し挟まれる家族への手紙に溢れる生活感がマエストロも同じ一介の人間であることを思わせます。

結果を見ればなるべくしてなった名指揮者も、出発時点ではもちろん何の裏付けもなかったわけです。それにも関わらず他の全てを放り出して自分の好きなことに邁進する、社会に対しても自分に対しても自由であるその姿勢を尊敬してやみません。


ちなみに自分の、「無人島に持って行くならこの1枚」は指揮・小澤征爾。ま、重要なのはピアニストで指揮はたまたまですが。

ピアノ協奏曲はクラッシックに親しみのない人にも比較的聴きやすいジャンルだと思うので、このCDはぜひぜひ聴いてみていただきたい。2番の冒頭とか、思わず息をのみます。